VTuberによる歌ってみた(カバー動画)は、いまやグループ公式チャンネルの看板コンテンツです。当サイト収録分(公式チャンネル投稿のみ・全件実在確認済み)を公開年別に数えると、その伸びは階段を上るように続いてきました。本稿では、年ごとの本数データと「その年の代表カバー」3本ずつを、動画つきでたどっていきます。集計時点は2026-09-22です。
この記事の要点
- カバー本数は2019年234本から2025年939本へ拡大。2025年が最多です
- 2022年だけ前年を下回り(632本)、2026年は9月22日時点で575本
- 各年の代表カバー3本ずつ、再生プレーヤーつきで紹介します
8年間のカバー本数はどう増えたか
結論は「右肩上がり」の一言です。2019年の234本から2025年の939本まで拡大が続き、2024年は854本、2023年は761本と、年々の階段がはっきり読み取れます。
| 公開年 | 収録カバー数 |
|---|---|
| 2018 | 77本 |
| 2019 | 234本 |
| 2020 | 445本 |
| 2021 | 675本 |
| 2022 | 632本 |
| 2023 | 761本 |
| 2024 | 854本 |
| 2025 | 939本 |
| 2026 | 575本 |
歌ってみたという形式は、動画投稿サイトで育った歌い手文化をルーツに持ちます。VTuberの活動環境が整うにつれて、その文化を公式チャンネルの企画として継承する流れが広がったと説明されることが多く、この表の急増はその裏返しだと考えています。それでは、年ごとの名場面を見ていきましょう。
各年の代表カバー — 名場面とともにたどる8年
2019年 — 上位3本が2000万台の激戦
収録234本の元年的な年。上位3本がすべて2000万台という、いま振り返っても豪華すぎる顔ぶれです。
1本目は、湊あくあの1周年記念「ダダダダ天使」2359.5万回(2026-09-22時点)。ナナヲアカリの名曲を、まさに「アクアらしさ」全開で歌い切っています。
2本目はにじさんじの5人名義《楓刀京明千葛》による「ヤンキーボーイ・ヤンキーガール」2288.9万回。シネマポップの疾走感を、賑やかな掛け合いで伸ばし切る名演です。
3本目は葛葉の「疑心暗鬼」2222.6万回。この年すでに歌の実力者の片鱗が光っていたことが、数字からも読み取れます。
2020年 — 「KING」と24人の「吹っ切れた」
収録445本と倍増した年。この年の上位2本は、いまも語り草になる大記録です。
1本目は葛葉「KING」5982.6万回。ひとつのカバーが曲の顔を引き受けてしまった、カバー史の転換点です。
2本目はホロライブ24人が歌う「おちゃめ機能」5115.1万回。大人数企画の興奮を、これでもかという密度で詰め込んだ金字塔です。
3本目は兎田ぺこらによるネクラミーア「ディスコミュ星人」のカバー2497.6万回。跳ねる声と笑い声の距離が近い、ぺこらの魅力の塊のような1本です。
2021年 — 「フォニイ」が記録を打ち立てる
収録675本。そして、当サイト収録全体の最多記録が生まれた年です。
1本目は星街すいせい「フォニイ」6610万回。8年間を通じて最も聴かれたカバーの座は、いまもこの曲のものです。
2本目はGawr Gura×Calliope Moriの「KING」4585.7万回。英語圏の歌みた文化を、一気にこの世界の中心へ引き寄せました。
3本目は町田ちまの「フォニイ」3441.5万回。同じ曲が同時期にここまで伸びる——曲の時代性と歌い手の力が重なった、2021年ならではの現象です。
2022年 — ユニット名義の年
収録632本と、唯一前年を下回った年。けれど数字の落ち込みとは裏腹に、上位の個性はむしろ増しました。
1本目は湊あくあ×猫又おかゆのユニット・Startendによる「アスノヨゾラ哨戒班」2560万回。2人の声が重なった瞬間の温度は、この世代の名場面です。
2本目は6人編成スターアニマルによるYOASOBI「怪物」のカバー2380.1万回。大人数だからこそ出せるアンサンブルの厚みを、実演してみせた1本です。
3本目は渡会雲雀によるMrs. GREEN APPLE「StaRt」のカバー2242万回。まっすぐ昇っていく歌声が、曲名そのものになっていました。
2023年 — 上位3本をにじさんじ勢が占める
収録761本。この年のTOP3は、すべてにじさんじ勢が制しました。
1本目は不破湊「DOGLAND」5322.4万回。2020年代後半の男性ソロカバーの水準を、一気に引き上げた大ヒットです。
2本目は小柳ロウ×星導ショウ×緋八マナの「S.C.R.E.A.M」4310.3万回。3人の声が捨て身の熱量で交錯する様は、何度観ても鳥肌ものです。
3本目は星導ショウによるMECHATU-A「パーペキヒーロー」のカバー3551万回。湿った疾走感を、実に「ショウらしい」色で聴かせてくれます。
2024年 — 歌い手集団の台頭
収録854本。この年から、歌い手集団の名義が上位に並ぶようになります。
1本目は星街すいせい率いるHoshimatic Projectの「アンノウン・マザーグース」3314.3万回。wowakaの名曲を、大所帯ならではの厚みで現代に届けています。
2本目はローレン・イロアス「ずうっといっしょ!」2272.8万回。歌詞を丁寧に積み上げる歌い口が、原曲の優しさと不器用さをそのまま運んできます。
3本目は3SKMによるOfficial髭男dism「ノーダウト」のカバー1763.8万回。4人の声がそろって初めて立つアンサンブルは、ユニット企画の理想形です。
2025年 — 個人歌唱が頂点を取った年
収録939本の最多記録の年。頂点に立ったのは、大所帯でも企画でもない、ひとりの歌でした。
1本目はローレン・イロアスによるDECO*27「モニタリング」のカバー2165.1万回。この年のみならず、いまも歌われ続けている「みんなの曲」になった1本です。
2本目はhololive English -Advent-の「Team Tomodachi」1386.3万回。英語圏チャンネルの企画力の高さを、数字の面でも証明しました。
3本目はOriensの「厨病激発ボーイ」1097.3万回。ユニット企画の厚みが、ボカロの名曲と噛み合った好例です。
2026年 — 年途中でここまで来ている
9月22日時点で収録575本。通年と単純比較はできませんが、上位の顔ぶれはすでに今年らしい色を出しています。
1本目は不破湊×葛葉×ローレン・イロアス×小柳ロウ×榊ネス「イイじゃん」923.8万回。5人の個性が入れ替わりながら加速していく、今年いちばんの勢いです。
2本目は三枝明那「セレナーデ」556.9万回。大所帯が強い年の中で、個人歌唱だけで2位に食い込んでいます。
3本目はアンジュ・カトリーナによるなとり「プロポーズ」のカバー500.7万回。甘さと切なさの間で揺れる声の使い分けに、今年の悲恋部門の首位は確定だと個人的には思っています。
データから読む、8年間の3つの変化
年別の本数と名場面を並べると、8年間の変化は3つに整理できます。
- 大人数コラボの存在感 — 「吹っ切れた」からスターアニマル、Hoshimatic Projectまで、各年の上位に顔を出します
- ソロカバーの強さ — 「KING」や「フォニイ」のように、個人の代表カバーが数千万回を作ります
- 歌い手集団の台頭 — 2023年にじさんじ勢の上位独占から、3SKMやOriensへと形を変えながら増加
大人数の企画には勢いのある楽しさがあり、ソロには歌い手の個性が凝縮されています。どちらが上という話ではなく、聴き分ける楽しみが増え続けている——8年間のデータは、そう教えてくれていると感じます。
まとめ — 文化は次の年へ
2019年の234本から2025年の939本へ。主役はソロから大人数、そして歌い手集団へと広がりながら、どの年にも「その年の顔」が必ず生まれていました。2026年は年途中で575本。次の「顔」がどこから現れるのか、これからも数字で見届けていきます。収録全体の順位は人気カバーランキングで、切り口の違う読み物は特集・コラム一覧でどうぞ。